社会とは

「人間は社会的動物である」とは古代ギリシャの哲学者アリストテレス言葉であるが、この言葉は人間の本質をズバリ突いている。社会という集団を作って生活していく(というか、それ以外のやり方では生きていくことができない)というのが人間の人間たる所以だからである。人間が生物・動物であるとともに、社会的存在であるという規定は、人間に関わるいかなる問題を考察する際にも、無視することのできない重要なポイントである。

しからば、社会とは何か、というようなことが、当然、問題となってくる。結論を先に述べておくなら、社会とは、労働とその成果の消費を集団的に行うことを通じて成員全体の一体性を維持している集団のことである。この意味では、動物の群れの中にも、ただ単に行動を共にするのみならず、集団で狩りを行ったり、それを分け合ったりするという意味で、社会性の片鱗を見せるものがあるし、社会性昆虫などは、食糧の獲得・分配や営巣活動において高度の社会性が見られるものがある。

しかし、人間社会は単にそれに留まらず、進化史を通じて人間に至るまでに獲得されてきた様々な特徴が大きく開花する場であるとともに、経済・政治・文化のような、動物段階ではほとんど存在しなかった活動が主役となって躍り出てくる舞台となるのである。