人間以前

人間のことを、その大本に遡って理解するためには、人間に至るまでの進化の道筋を論理的に辿ってみる必要がある。何故かと言えば、人間が持つ諸特性は、人間になって突然何の由来もなしに現れてきたものではなく、人間に至る進化の道筋の中で登場した生物たちが獲得した特性を基礎にして、それを発展させたり、時に大きく変更したり、新たなものを付け加えたりしながら、今日の人間に備わるようになってきているからである。

とは言うものの、それは進化の事実を、微に入り細を穿つように取り上げながら、詳細に列挙していくということではない。進化の歴史の中で我々に至る生物系統に刻印された重要な諸特性を進化の事実の中から大きく抽象し、論理化し、体系的に整理して理解しておくということである。そのような作業を抜きにして今日の人間のありさまを正しく理解することはできないのである。